コラム
認定日以後3か月以内に受診していなくても遡及請求できる?裁決例を解説
今回ご紹介するのは令和6年(国)第627号裁決例です
※実際の裁決全文はこちら(令和6年(国)第627号裁決)。
障害認定日から3か月を過ぎた診断書しかなかったため、障害認定日請求が却下されましたが、
不服申し立てを行った結果、その診断書で障害の程度を判断すべきとされた事例になります。
障害認定日請求と「3か月ルール」
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。
この日の状態で請求するのが「障害認定日請求」で、認められれば最大で過去5年分をさかのぼって受け取ることができます。
ただし、この請求では
「障害認定日以後3か月以内の状態が書かれた診断書」
を提出する必要があります。
この期間の診断書がないと、認定日の障害の状態がわからないとして、審査に進むことができません。
※傷病によってこの取扱いによらない場合はあります。
実際のご相談でも、「その頃は病院に行けていなかった」というお話はよく伺います。
どんな事案だったのか
請求人の方は自閉スペクトラム症で、すでに事後重症請求により障害基礎年金2級を受給していました。
そのうえで、障害認定日にさかのぼる請求を行いましたが、提出した診断書は
障害認定日から「3か月22日後」
の状態を記載したものでした。
そのため、認定日の状態を認定できないとして却下されています。
この方は県外の病院に通院しており、認定日の前後はコロナへの感染不安から通院できなかったという事情がありました。
診断書の備考欄が大きな意味を持った
この裁決で重要だったのは、診断書備考欄の記載です。
医師は、
「認定日前後コロナの影響で来院できなかった」
と記載していました。
さらに申立書でも、
・通院の意思はあったが、感染への不安で通院できなかった
・そのため認定日の診断書を取ることができなかった
・先に事後重症請求だけを行い、主治医に確認したうえで認定日請求を行った
といった経緯が具体的に書かれていました。
審査会はこれらの記載から、受診が遅れたのはコロナへの不安で通院できなかったためだと認めています。
3か月を過ぎた診断書でも認められる?
結論からいうと、事情によっては認められる可能性があります。
まず前提として、審査会は「認定日以後3か月以内の診断書で判断する」という取扱い自体は相当であるとしています。
ルールそのものを否定したわけではありません。
そのうえで、本件では次の2点を理由に例外を認めました。
・受診できなかったことが本人の責任ではないこと
・3か月22日後の状態でも、認定日当時と大きな変化はないと考えられること
認定日の時点で緊急事態宣言は解除されていましたが、不要不急の外出や緊急ではない通院の自粛は引き続き呼びかけられていました。
審査会はこうした社会状況に加え、傷病の特性や当時の生活環境も考慮し、
「提出された本件診断書で、障害の程度を判断することが許されるべきである」
と判断しました。
2級が決まったわけではありません
注意したいのは、この裁決で2級が認められたわけではないという点です。
あくまで「この診断書で審査しなさい」という判断であり、障害の程度はこれから改めて判断されます。
また、本件には有利な条件がそろっていました。
・超えた期間が3か月22日と比較的短い
・状態が大きく変わりにくい傷病である(自閉スペクトラム症)
・受診できなかった理由が社会全体に共通する事情だった
ズレが大きい場合や、症状に波がある傷病、本人の事情で通院が途切れていた場合には、同じ結論になるとは限りません。
障害年金請求で大切なこと
認定日の診断書が取れないときは、
「なぜその時期に受診できなかったのか」
を具体的に書面に残すことが重要です。
・診断書の備考欄に、受診できなかった事情を書いてもらう
・病歴・就労状況等申立書に、経緯を時系列で書く
・その時期の生活状況や症状がどうだったかを伝える
本件でも、事情がきちんと書かれていたからこそ、審査会がそれを事実として認めることができました。
まとめ
令和6年(国)第627号裁決では、障害認定日から3か月を過ぎた診断書であっても、受診できなかったことに本人の責任がなく、認定日当時と状態が大きく変わらないと考えられる場合には、その診断書で障害の程度を判断すべきとされました。
「認定日の診断書がないから、さかのぼりは無理」と言われて諦めている方もいらっしゃるかもしれません。
事情によっては、検討の余地が残っていることがあります。
ご自身のケースが当てはまるか気になる方は、お気軽にご相談ください。