コラム
【障害年金】同じような症状でも結果が分かれた2つの裁決から見る、不支給と認定の違い
【障害年金】同じような症状でも結果が分かれた2つの裁決から見る、不支給と認定の違い
障害年金は様々な傷病が対象ですが、対象外の傷病もあります。その代表例として「神経症」があります。
神経症・・・精神的原因によって起こる心身の不調でその人の性格と深いかかわりがあり、症状の起こり方や
内容はわれわれの生活経験からよく理解でき、原因が除かれると原則として軽快する。
・不安障害
・身体表現性障害
・解離性障害
・感情障害
・心因性性的障害
※出典 南山堂医学大辞典
今回ご紹介するのは、再審査請求で2級が認められたケースと認められなかったケースになります。
一見同じ神経症ですが、なぜ結果が分かれたのかをご案内します。
再審査で2級が認められたケース
まず、再審査で2級が認められたケースでは、当初の診断名は「交通事故後心因反応」でした。
「心因」・・・心理的な原因
心因反応とは、正式な病名ではありません。心理的なきっかけが原因として生じた症状(反応)のことをひっくるめた表現になります。
つまり交通事故後心因反応とは言葉の通り、交通事故をきっかけとして生じた反応を指しています。
しかし今回のケースでは、その後の経過の中で、抑うつ状態、高次脳機能障害へと診断名が変化していきました。
この裁決では、審査会は診断名の変更は特に問題なく、症状の内容や検査結果を見ています。
単なる一過性の心因反応ではなく、実態としては高次脳機能障害による障害の状態であったと評価されました。
さらに、診断書裏面、日常生活能力の判定や程度でも2級相当の内容となり、障害認定日時点で2級相当と認められ、不支給処分は取り消されました。
(平成26年(厚)第703号裁決事例)
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不支給が維持されたPTSDのケース
これに対して、もう一つのケースでは、傷病名は「外傷後ストレス障害」、いわゆるPTSDでした。
このケースでも、抑うつ状態、希死念慮、自傷行為などがみられ、休職や復職に関する記載もありました。症状だけを見ると、上記例とあまり変わりないように思います。
それでも審査請求でも不支給が覆らなかった理由は、審査会がこの傷病をICD-10コードF43.1のPTSD、すなわち神経症の範囲内にあるとし、その臨床症状からみても精神病の病態を示していないと判断したためです。
精神の障害の認定では、神経症は原則として認定対象にならないという考え方があります。したがって、このケースでは、たとえ症状が重く見えても、その状態をもって障害等級表にいう2級以上の障害に当たるとは認められない、と結論づけられました。
また、このケースでは、審査請求の段階で診断書に「うつ病」と追記しましたが、認められませんでした。
(平成28年(国)第438号裁決事例)
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2つの裁決で何が違ったのか
この2つの裁決を比べると、違いは単に「症状が重いか軽いか」ではありません。
再審査で2級が認められたケースでは、診断名が途中で変わっていても、検査結果や画像所見、具体的な日常生活上の支障から、実態として脳の器質的障害による高次脳機能障害であることが裏付けられていました。
※器質的障害・・・身体や脳の構造的・物理的な異常や損傷によって生じる障害のことです。
つまり、診断名ではなく、自覚症状や他覚症状、検査所見が評価されました。
一方で、不支給とされたPTSDのケースでは、症状のつらさはあっても、審査会はそれを精神病の病態とは評価せず、神経症の範囲内と評価しました。
この違いが、最終的な結果の違いになりました。
障害年金では「つらさ」だけではなく「どう評価されるか」が重要です
障害年金の請求では、「これだけつらいのだから認められるはずだ」と考えたくなるのは当然です。ですが、実際の審査では、症状の大変さだけでなく、それが認定基準上どのように位置づけられるか、客観的資料でどう裏付けられているかが問われます。
特に精神の障害では、診断名、病態の整理、検査結果、労働能力の喪失、特に日常生活能力の判定、程度が非常に重要です。後から診断名を修正しても、
その根拠が乏しければ認められないことを今回の事例が教えてくれています。そのため、最初の段階から診断書や病歴・就労状況等申立書の内容を丁寧に整えることが大切です。
まとめ
同じように抑うつ状態や希死念慮、自傷行為、就労困難があっても、障害年金の結果は必ずしも同じにはなりません。
再審査で2級が認められたケースでは、診断名の変更があっても、検査結果や生活状況から高次脳機能障害としての実態が認められました。これに対し、PTSDのケースでは、
症状のつらさがあっても神経症の範囲にとどまると判断され、不支給が維持されました。
裁定請求の段階で書類を作り込むことが大切です。
よくある質問
Q. PTSDでも障害年金はもらえますか?
PTSDは原則として神経症に分類されるため、そのままでは認定が難しいケースが多いです。ただし、精神病の病態を示していると評価される場合は例外もあります。
Q. 診断名が変わると不利ですか?
診断名が変わること自体は問題ではありません。重要なのは症状の内容や検査結果など、実際の状態です。